はじめに
太平洋戦争後、日本ではいわゆる終身雇用制度が一般的となった。この終身雇用制度は日本経済にはプラスに作用した。特に大企業では身分が保障されていたために社員は安心して仕事に打ち込むことができ、なにより愛社精神というものが育った。「わが社」という言葉が示していたとおり、まさに私=会社なのであった。モーレツ社員なる言葉もあった。高度成長時代、終身雇用制度は定着し、日本人にとってはあたりまえの制度となった。 50年にもわたって日本に慣行が存続した理由は、戦後の高度成長にある。日本の経済成長とともに各企業の組織が膨張し、子会社等を増やすことで中高年の従業員の処遇を確保しつつ、ピラミッド構造を保つことができたのである。
世界におけるたくさんの人がこの制度について説明してきたが、その中に伊淑铉(2004年)は日本における終身雇用制度の賛成の視点から雇用流動化論の登場を説明していたが、終身雇用制が保障されたとき、従業員は自分の創造性を発揮し、自発的に労働生産性を高め、自然に会社に貢献してくれるという論点を出している。終身雇用制度を定着し始めた時点、確かにそうだ。それにもかかわらず、低成長時代に入り、企業組織の拡大が止まると、本来存在した終身雇用と年功性との矛盾が明らかになってきた。