要旨: 吉本ばななは『キッチン』を発表した当時、日本でもっとも注目された女性作家である。彼女は1987年には第六回『海燕』新人文学賞受賞作『キッチン』でデビューし、さらに翌年、単行本『キッチン』で泉鏡花文学賞を受賞した。1993年にはイタリアSCANO外国文学賞審査員に認められ、アマゾン本屋にも四個半の星級に評価された。
もう一人、中国の現代女性作家である三毛は、彼女の第一部作品『沙漠中の飯店』の中で、台所を巡って、庶民の暮らしを書いた。また、その作品も人気になって、数多く翻訳、出版され、注目されている。
各自の国で一時ブームを起こした若い女性作家として書いたその作品は、どんな類似点あるいは相違点があるのか、それは何であるか、どうしてだろうか。
そこで、本稿の目的は『キッチン』と『沙漠中の飯店』という作品について分析を通じて、両作家を比較することである。
以下ではまずは両作品の粗筋を紹介し、次に二つの作品の類似点を分析し、最後に作品の相違点について分析して小論の主張を述べたい。
吉本ばななは、若い頃は左目が弱視だったので、治療のために右目に眼帯をし、ほとんど目の見えない状態の時期があった。しかし、この体験が後の作品に影響を与えることとなる。「その時、空想の世界にリアリテイを感じなければ、こんなに感覚が敏感にならなかった。」『吉本バナナ公式サイト』また、眼帯が取れた時に、夢中になったのが『オバケのQ太郎』(藤子F不二雄)だった。このように見ると、『キッチン』の中の言葉が漫画づかい、また文章に登場する人とオカルト的な事をリアルな現実として、日常感覚でごく自然に描く作風の元になっていると言えよう。
三毛は『沙漠中の飯店』を書く前に、勉強或いは愛情が原因で、三度自殺しようとしたこともあった。現実を避けるために、彼女はサハラへ旅行して、思いなりの理想的な生活を追求しようと思った。そこで荷西と結婚したあと、生きたくなった。だから、この作品で新しい生活への期待、また夫に対する愛情を探せた。言い換えれば、『沙漠中の飯店』は彼女自身の生活の有様と言えよう。