要 旨:本稿では、谷崎潤一郎始めて文壇に上がったときの社会環境、氏の少年時代貧困な生活、西洋耽美主義と永井荷風の影響は外因として、氏の畸形な母性思慕の感情は内因として、外因と内因共の影響で、谷崎潤一郎のマゾヒズムの傾向が形成したと結論したいと思う。
キーワード:谷崎潤一郎;マゾヒズム;社会環境;文壇
谷崎潤一郎(1886-1965)は日本現代文学史上耽美派の大家として、日本国内外でよほど有名である。特に氏の艶麗で官能的な作品や、奇怪な空想や犯罪を扱った作品は注目され、マゾヒズムと称された。「マゾヒズムとは、相手から身体的または精神的な苦痛や屈辱を与えられることによって性的快楽を得る傾向のことである。」 [2] 谷崎のマゾヒズムについての先行研究は多いであるが、その原因を研究した論文はまだすくないようである。一般的に、マゾヒズムの原因は複雑であるが、同期の耽美派作家は谷崎だけマゾヒズムによって文壇で独特な地位を占めている。したがって、いくつかの共同の条件の下で、谷崎自らの原因があるはずである。本稿は谷崎始めて文壇に上がったときの社会環境から、彼の少年時代の貧困な生活、畸形な母性思慕の感情、西洋耽美主義と永井荷風からの影響まで展開して、谷崎潤一郎のマゾヒズムに影響を与えた外因と内因を区別した上で、具体的な作品を手がかりに、マゾヒズムの原因を探りたいと思う。