要旨
松本清張(1909—1992)は日本代表的な社会派推理小説作家として、江戸川乱歩、横溝正史と一緒に日本ミステリー界の三大作家と認められている。1953年に『或る「小倉日記」伝』で芥川賞を受賞したが、1958年『点と線』『眼の壁』によって、松本清張ブームと社会派推理小説ブームを起こった。その以後、『ゼロの焦点』『砂の器』などの作品もベストセラーになり戦後日本を代表する作家となる。従来の推理作品と違って、清張の作品は、犯罪の社会根源を辿り、社会の矛盾と暗黒を暴き立て、人間の心の奥まで掘り出している。一方、後世の作者森村誠一、東野圭吾、宮部みゆきも清張から深い影響をうけていた。「ゼロの焦点」は『虚線』のタイトルで『太陽』に連載され(1958年1月号 - 2月号)、同誌休刊後、『零の焦点』のタイトルで『宝石』に連載(1958年3月号 - 1960年1月号)、1959年12月に光文社から刊行された。後に電子書籍版も発売されている。1961年・2009年の2度にわたり映画化、また多数テレビドラマ化されている。
敗戦後、日本女性は政治、教育、家庭、就職等の方面における行使できる権利がどんどん多くなるが、『ゼロの焦点』から見て世論、婚姻等に縛られている女性はまだ多さそうだ。今回の小論はこの作品における女性形象を分析することを通してその時代の女性地位を究明したいと思う。
『ゼロの焦点』における女性形象、とりわけその時代に女性地位を究明するように、小論は三つの章節に分けて展開していく。第一章はこの作品が創作された昭和30年代の社会概観とそのような社会に女性生活状況と地位の変化を概述したいと思う。そして作者が女性を注目する原因を紹介する第二章は作品の中の三人の女性を具体的に分析し、悲劇的な結果をひきおこした社会原因と人物個人原因等の方面におけて分析する予定だ。第三章は作者が本作における男性と女性に対して別々の態度と女性に対して抱えている感情と期待を解明すると思う。
キーワード:松本清張 ゼロの焦点 戦後 女性地位
目次
中文摘要
要旨
1.はじめに-1
1.1先行研究-1
1.2研究動機-1
2.「ゼロの焦点」から見られる女性の地位-2
2.1社会背景から女性地位を見る-2
2.2清張が女性を注目する原因-3
3. 「ゼロの焦点」から見られる女性の社会地位-4
3.1本作における女性形象の分析-4
3.2女性形象から女性の社会地位を見る-5
4.清張が本作の中の男女に対する態度を分析する-7
4.1男性に対する態度-7
4.2女性に対する態度-7
5.おわりに-9
参考文献-10