要 旨:本論文は、自殺までの「先生」の心理の変化過程によって、人間のエゴイズムと罪の意識を負う同時に、ずっともがいて、最後自殺する「先生」の死生観の「柱」をさがし、「先生」の死生観について探求してみたいのである。
キーワード:『こころ』;夏目漱石;死生観;意識
はじめに
夏目漱石は日本近代文学の巨匠である。漢学も英国文学も通暁し、豊かな教養と広い視野を持っている。社会で発生した物事に対して文明批評的な態度をとっている。彼の作品は深遠な、現実的な意義がある。その中に、後期のは主に人間の心底を描いた作品である。 『こころ』は後期三部作の一つである。大正3年、単行本にするとき、夏目漱石が広告文において「自己の捕へんと欲す人々に、人間の心を捕へんえたる。この作物を奨む」と書いているように、『こころ』は利己の心と道義の心の衝突を持って、生と死の界でもがいて、最後自殺を選んだ「先生」の心理を詳しく描いて、近代のインテリの精神世界を表す小説である。