要 旨: 前文か何らかの要因、きっかけとなって後文を制約する文を条件文と呼ぶ。条件を表すものには「なら」、「ば」、「たら」、「と」、がある。しかし使い方と意味は同じではない場合があり、混同しやすいと言われている。
市川保子(2005)は「初級日本語文法と教え方のポイント」に条件文について、非過去かと過去かに分けて分析する。非過去か過去かというのは、その事態が過去に起こったか否かということだ。非過去のうち事態が実際に起こるか起こらないかはわからない条件を仮定条件と言う。いつもその事態が起こる条件を一般条件と言われている。于日平(1997)は「原因/理由を表す複文における時間と表現の関係―「ために」と「ので」「から」の相違を中心に」という文章の中に複文は主文と従文のテンスが一致かどうかによって「相互に独立」と「相互に制約」を二分類されている。すなわち、「絶対時制」文と「相対時制」文と二種類に分類されている。
だから、「なら」、「ば」、「たら」、「と」を用いた条件文も于日平(1997)のように「絶対テンス」と「相対テンス」によって分けられるのではないかと考えていた。
そこで、本稿の目的はもう研究した用法を基礎的にまとめて、動詞の条件文を中心に「なら」、「ば」、「たら」、「と」の使い方を通して、「絶対テンス」と「相対テンス」の方面から、日本語の条件表現を比較することを目指す。またその区別と時間の関係を明らかにするつもりである。
以下では まず「なら」、「ば」、「たら」、「と」の使い分けを通して、「なら」文は「絶対テンス」文に属するかどうかを検討する。次に「と」、「ば」、「たら」文は「相対時制」に属するかどうかを分析する。また「と」、「ば」、「たら」の中に混同しやすい部分を検討する。