要旨:瀬戸内晴美は徳島の仏壇店に生まれ裕福だったこともあり、当時としては珍しく東京女子大学に進み、在学中に最初の結婚をする。夫の教え子と恋に落ちて、夫と長女を残して家を出てしまう。そのあと働きながら少女小説や童話を書き始め、やがて瀬戸内晴美として大人向け作家に転向する。自身の男性遍歴を元に書いた『花芯』という作品が、ポルノだと批判され、「子宮作家」と呼ばれるようになり。その後も作家との不倫や恋愛を繰り返して、男性遍歴を元にした作品『夏の終わり』を発表、本作は女流文学賞を受賞する。このことで、作家としても評価されるようになる。小説家として名を成した晴美だったが、その孤独と虚無感は日ごとに増すばかりだった。そしてついに晴美は、敬愛する作家であり、僧侶である今東光のもとを訪れ出家を申し出る。51歳で出家し瀬戸内寂聴となり、京都に寂庵をかまえ、その『青空説法』は人気となる。このあたりから、彼女への批判もだんだん減っていく。僧侶の傍ら、作家としても様々な女性の評伝を書いたり、源氏物語を現代語訳したりと、積極的な活動を続けている。男性遍歴を赤裸々に語り、次は出家して僧侶となるという生き方は、多くの女性にも衝撃を与えた。瀬戸内晴美は出家して、尼僧になったあとはたくさんの説法作品を発表する。「愛すれば執す、執すれば着す」。執着を捨て、解き放たれた、自由な心になったとき、人は輝くように美しくなる。
キーワード:瀬戸内寂聴;文学作品;仏教思想
目次
要旨
中文摘要
第1章 はじめに-1
1.1 瀬戸内文学の時代背景-1
1.2 晴美と寂聴-1
第2章 瀬戸内晴美の作品について-3
2.1 瀬戸内晴美文学の特色-3
2.2 『夏の終わり』にめぐって女性の業-3
2.3 『女徳』の中に出離への追尋-4
第3章 瀬戸内寂聴の作品について-7
3.1 寂聴の新生-7
3.2 『源氏物語』の翻訳-7
3.3 出家後の作品にみる仏教の影響-8
第4章 おわりに-11
4.1 まとめ-11
4.2 本研究の意義と欠点-11
4.3 今後の展望-11
参考文献-13
謝 辞-14