要旨
私は山崎豊子との出会いは、テレビドラマ『白い巨塔』を見たことがきっかけであった。それにしっかりと心が引かれた私は、すぐ原作の小説を読んで、作者の山崎豊子とその作品に興味を強く持つようになった。山崎豊子は近代日本文学を代表する社会派の女流作家である。そのテーマは多岐で、現代日本社会にかかわるさまざまな問題を捉えて社会現実をリアルに描いた作品が多い。病院と医学を題材とする問題小説『白い巨塔』は、病院の日常の出来事や医者同士、医者と患者の複雑な関係を描くことによって、医療現場の現実や人間の本質を描破した。
本論文は、山崎豊子とその作品『白い巨塔』に現われた人間性について考察する。医療現場で対立する二人の主人公(医者)の異なる人間性や価値観についての分析を通して、人の命にかかわる医療現場での暗黒面を暴き出すのがその目的である。
本論文は二つの部分からなる。第一部分では、山崎豊子の創作の過程を明らかにする。第二部分では、『白い巨塔』の主人公たちの性格を分析し、利益の前に彼らがどのような選択をしたかについて考察して、人物の心理の矛盾と人間性の衝突を検討する。
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キーワード:社会派 病院 利益 人間性
目次
中文摘要
要旨
1.はじめに-1
2.山崎豊子という作家-2
2.1山崎豊子の生い立ち-2
2.2山崎豊子の創作過程-2
2.3山崎豊子作品の芸術性-3
2.4「取材の鬼」と呼ばれて-4
3.『白い巨塔』における人間性-6
3.1『白い巨塔』のあらすじ-6
3.2財前五郎の矛盾性について-7
3.2.1教授選挙について-7
3.2.2医療事故について-8
3.3財前五郎の死によって救われた「人間性」-9
3.4里見修二の人生観-9
3.4.1医学研究と患者に真剣に向き合う里見修二-10
3.4.2真理を貫く里見修二-10
4.おわりに-12
参考文献-13