要旨
太宰治は日本の近代文学で著名な小説家として、戦前から戦後にかけて多くの作品を発表した。5回の自殺未遂や小説のデカダン的ともいえる作風のためか、真に迫った作風を好む作家として捉えられているが、実際はユーモアの溢れるものも残している。「無頼派」または「新戯作派」の一人に数えられる太宰は、頽廃的な作風を好んだ、と一般に言われている。しかしながら、太宰自身は退廃的な作品を書きながらも、同世代の作家の中で最も「神を求めた人」であった、とする研究も評論も多くある。
「走れメロス」は太宰治の代表作で昭和十五年五月号の『新潮』に掲載された。教科書にも採用され、太宰作品の中では「人間失格」に匹敵する知名度を誇っている。この作品はシラーの詩『人質』と古伝説をもとに創作した。
本論文は時代背景と作者の人生経歴によって、シラーの「人質」と比較し、凡人メロス、英雄メロス、メロスの日本化三つの面から述べて、「メロス」という人物像における深い意味を掘り出してみる。
キーワード:太宰治 走れメロス メロス 人物像
目次
中文摘要
要旨
1.はじめに-1
1.1 先行研究-1
2.『走れメロス』の創作背景とあらすじ-2
2.1 『走れメロス』と『人質』-2
2.2 熱海行-2
2.3 『走れメロス』のあらすじ-2
3.凡人メロス-3
4.英雄メロス-5
5.メロスの日本化-6
6.おわりに-8
参考文献-9