要旨: 『こころ』は日本の国民作家夏目漱石の後三部曲の一つである。夏目漱石は小説の中で、その変革していた時代を背景に、新旧倫理道徳の衝突、個人主義と道徳主義のぶつかりなどの問題を披露したが、人間の内心の戦いを生き生きと現れた。
本稿は「先生」という主要登場人物をめぐって「明治精神」という概念の内実を探究してみる。明治精神についての探究は全部三部分に分けて進めていく。
一、作家としての夏目漱石の紹介及び『こころ』の創作背景。小説には常に作家本人の面影が見られる。作者本人のことをちゃんと理解したうえで、作品についての解析はちゃんと行うことが可能になる。作品の背景を良く理解したのは、小説を解析するのに極めて重要な一環である。
二、「先生」という主要登場人物についての分析。「先生」の人物像についての分析は三点から展開する。まずは、幼い頃の境遇である。二十歳未満の時に、既に両親は同じ病気で亡くなった。最も信頼できる叔父は貪欲な人で、自分の財産まで横領した。次は、「k」との付き合い。「先生」も「k」もお嬢さんのことが好きになっていたが、「先生」は嫉妬に駆られて、「k」を裏切り、先にお嬢さんに自分の心意を伝えた。最後は、「先生」と妻の不幸な婚姻。「k」の自殺によって、「先生」はその後、一生のうちに「自己嫌悪」に陥った。人間は罪悪な存在であり、自分も罪悪な人である。他人は信じられないだけでなく、自分も信頼できない。
最後の部分は、「先生」の死から「明治精神」についての探究。遺書の最後、「先生」は明治の精神に殉死すると言っていたが、「明治精神」についての探究は必ず「先生」の死因の分析から始まるべきだ。言わば、第一節において、第一、明治天皇の死と乃木大将の殉死による触発。第二、旧倫理道徳の責め。第三、自分の孤独な心境という三点に分けて論を進めた。
第二節は、夏目漱石の「明治精神」についての探究。「明治精神」というのは明治時代特有の精神であり、明治時代全期に貫いた一種の自由的と独立的な個人的精神である。一方、それは必ず、孤独と内心のもがきにも伴っていた。「明治精神」は明治時代から始まり、また天皇の死によってその終わりを告げた。
キーワード:明治精神 夏目漱石 先生 衝突 ぶつかり
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
1.夏目漱石と『こころ』1
1.2作家としての夏目漱石1
1.3『こころ』とその時代2
2.先生の人物像の分析2
2.1幼い頃の遭遇2
2.2Kとの付き合い3
2.3不幸な婚姻3
3.明治精神についての探究4
3.1先生の自殺の原因について4
3.1.1明治天皇と乃木大将の死の触発4
3.1.2倫理道徳の責め5
3.1.3孤独な心境5
3.2夏目漱石の明治精神6
おわりに7
参考文献8
謝辞9