要旨:『地獄変』は日本作家芥川龍之介の代表作の一つとされている。この小説は大正7年(1918)に発表し、発表当時から高い評価を得た。主人公である良秀は天下一の絵師で、自分の娘が火に焼かれた時、嘆くことでも怒ることでもなく、陶酔しつつその成り行きを見守り、結果、見事な地獄変の屏風を描き終えるという物語である。
本論文は五部分から構成されている。第一部分には本課題にある意義を紹介し、今まで『地獄変』の先行研究についてまとめようとする。第二部分には『地獄変』という小説の主な内容と創作背景について紹介する。第三部分には作品における人物群像すなわち良秀、良秀の娘、大殿などの人物像及びその道徳表現について考察しようとする。第四部分には良秀の娘の死の原因をつとめようとする。つまり、既存道徳や秩序の代表者、維持者と反逆者、芸術家間に存在している矛盾や衝突を究明しようとする。それを通じて、醜悪と美善の矛盾、理想と現実の矛盾、芸術と道徳の矛盾を研究する。第五部分は論文全体に対するまとめている。主人公である良秀は芥川が書かれた人物として、その思想はまさに芥川思想の最真実な表現になったため、良秀が芸術に対する気違い求めと道徳の矛盾は芥川の心の奥底にある道徳矛盾を提示されていたかもしれない。要するに、本論文には『地獄変』における娘の死の原因を考察し、醜悪と美善の矛盾、理想と現実の矛盾、芸術と道徳の矛盾に関する道徳矛盾を明らかにしたい。
キーワード:芥川龍之介 道徳 矛盾 良秀の娘
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
1、作品と作者の紹介2
1.1、『地獄変』のあらすじ2
1.2、『地獄変』の創作背景2
2、人物群像及びその道徳表現3
2.1、良秀の人間性3
2.2、良秀の娘の美善4
2.3、大殿の暴虐5
3、娘の死と道徳矛盾6
3.1、娘の死の原因6
3.2、醜悪と美善の矛盾7
3.3、芸術と道徳の矛盾7
終わりに8
参考文献10
謝辞11