要旨:日本のリアリズム作家・水上勉は優れた作品を大量に創作した。彼は貧しき家に生まれ、辛い生活と複雑な人生を体験していた。そのため、作品は言語が質素で有力であり、人物の性格も鮮明にみえている。しかも、作品内容は生活雰囲気を富んでいて、きわめて芸術的影響力を持っているため、高度の芸術的概括力がある。1950年代、本格派推理小説家である彼は松本清張、笹沢佐保とともに推理の三傑と称させるようになった。普通の民衆を主人公にする松本清張と同じように、彼の小説の主人公は平凡な人が多い。しかしながら、1960年代に彼は純文学の世界に一転した。1961年に『雁の寺』が直木賞を入賞したことをきっかけに、純文学・人間悲劇小説の創作の道に入った。彼は日本下層社会の生活に詳しく、最下層の竹人形師、木樵、遊女といった人物の辛酸とその心の世界を深く掘り下げることによって、彼らに対する理解と同情を表している。中でも、『越前竹人形』と『五番町夕霧楼』は水上人間悲劇小説の代表作といえるのである。
本稿は三つの方面、即ち①ふたりの女性主人公の特徴、②作品のプロット③悲劇性の主題から女性主人公の悲劇性を分析してみる。
なお、本稿は作者の人間悲劇小説とその悲劇意識、及び作者の女性像から悲劇性が表れる原因を分析する。女性主人公の異同を研究してみることによって、二つの作品をより一層理解を深める。作者の他の作品への理解も一歩進むことが出来ると考えられている。
キーワード:人間悲劇小説 悲劇意識 悲劇性 下層社会 女性
目次
要旨
中文摘要
はじめに-1
1. 作品のプロット-1
1. 1明確した主題-1
1. 2変化に富んだ過程-2
1. 3慘然な結末-4
2. 女性主人公の特徴-5
2. 1作者の人間悲劇小説の女性の特徴-5
2. 2二人の女性主人公の特徴-5
2. 2. 1外見の特徴-5
2. 2. 2性格の特徴-6
3.悲劇性-7
3. 1作品の悲劇性-7
3. 2女性主人公の悲劇性-8
4.悲劇原因の分析-10
おわりに-10
参考文献-11
謝辞-12