要旨:谷崎潤一郎は日本耽美派の代表的な作家として華やかに文壇にデビューした。明治、大正、昭和三つ時代をわたり、彼の作品の中に現れている「美」の世界は文壇に鮮やかな衝撃を与え、従来の日本文学にはあまり見られなかった異質な主題だった。谷崎潤一郎文学は初期においては「悪魔主義」の作家と言われ、中期においては「思想がない」の作家と言われ、昭和に入ってからは、「日本美を継承して大成した作家」と言われた。谷崎潤一郎の文学の形成について、大きいな要素として、悪魔主義、思想性がない、女性拝跪への傾倒、庶物崇拝などをあげる。
本論文は『春琴抄』をめぐり、そうした美意識の顕現を人物性格の描写、物語の背景と創作動機などから解読してみる。
本文の構成は、以下の三つの部分からなる。第一部分は『春琴抄』の創作動機、主題、人物像を紹介する。第二部分は『春琴抄』における「美」の顕現について説明する。第三部分は谷崎文学の美意識の源と特色、そして谷崎の耽美文学について紹介する。
キーワード:谷崎潤一郎;耽美派;女性拝跪;『春琴抄』;美意識
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
第一章『春琴抄』について2
1.1『春琴抄』の誕生と主題2
1.1.1創作動機2
1.1.2あらすじ2
1.1.3主題3
1.2『春琴抄』における独特的な人物像3
第二章『春琴抄』における「美」の顕現5
2.1『春琴抄』における女性の美5
2.2『春琴抄』における関西古典美5
2.3視覚喪失による触覚の世界6
第三章谷崎文学における美意識7
3.1美意識の源 7
3.2美意識の特色8
3.3谷崎の耽美文学8
3.3.1意義8
3.3.2局限性9
おわりに10
謝辞11
参考文献12
付録12