要旨:紫式部の『源氏物語』は日本古典文学において最も有名な作品の一つであり、日本ないし世界において一番古い長編小説でもある。この作品は日本古典文学の最高傑作であり、日本の「紅楼夢」だと誉められるようである。また、中国古典文学において最も有名な長編白話小説『紅楼夢』は作者の曹雪芹が苦心して10年間かかって書かれた作品であり、中国四大名著の一つでもある。
『紅楼夢』と『源氏物語』についての先行研究は、中国ではわりあい多いのに対して、日本ではかなり少ないようである。この両作品はそれぞれ中国を、日本を代表する古典文学として名作品と認められ、文学上に屹立する最高峰であって、両国の後世文学に大きな影響を与えている。中国では、いまになって「紅学」の研究が盛んであるが、日本でも『源氏物語』にちなんで、「もののあわれ」という美的理念が生まれ、「源氏学」の流れがある。中国語版の『紅楼夢』と『源氏物語』をよく読んでいて、両作品における登場人物は感情が繊細で、異同点が多くある。特に生き生きと描かれている男主人公の賈宝玉と光源氏という男性像に気を惹かれた。そのため、筆者は主に帰納、分析、総括、テキスト分析といった方法を採用し、賈宝玉と光源氏の共通点と相違点に関する分析を通して、この二人の男性像をさらに深く理解できよう。
本論文の構成は主に四つの部分からなっている。まず、両作品のストーリーについて簡単に紹介する。それから、賈宝玉と光源氏という男性像の類似点について論じる。彼らは感情の豊かな人であり、女性に対して友好であこがれを満たす。両作品においては悲劇の色彩が多数を占める。賈宝玉も光源氏も最後の結末として仏門に入ったのである。同様に彼らは男尊女卑の時代で、作者の理想化の人物だと見られる。また、賈宝玉と光源氏という男性像の相違点について論ずる。権勢と官途、女性への態度、人間味と愛情といった面で異なるところがある。最後に賈宝玉と光源氏に対する外部からの影響を分析する。
本論は『紅楼夢』の賈宝玉と『源氏物語』の光源氏への分析を通じて、『紅楼夢』と『源氏物語』を解読するための視点を提供して、国内の関係研究に多少役立てばいいと思う。
キーワード:『源氏物語』『紅楼夢』 賈宝玉 光源氏
目次
要旨
中文摘要
はじめに-1
第一章 『紅楼夢』と『源氏物語』とのあらまし-4
1. 『紅楼夢』のストーリー-4
2. 『源氏物語』の粗筋-4
第二章 賈宝玉と光源氏の男性像の類似点-6
1. 女性への多情多感-6
2. 男の欲望と色好み-7
3. 悲劇性の高さ-8
4. 理想化の人間像-9
5. 運命と因果応報-10
第三章 賈宝玉と光源氏の男性像の相違点-12
1. 権勢と官途-12
2. 女性への態度-13
3. 人間味と愛情-14
第四章 賈宝玉と光源氏に対する外部からの影響-16
1. 周りの人からの溺愛-16
2. 精神的な危機-17
3. 特有の社会環境-17
おわりに-19
謝 辞-21
参考文献-22