要旨:相撲は日本の国技として広く知られているのだけでなく、昔ながらの伝統文化を色濃く 残している点でも人々に親しまれている。相撲は、宗教的儀礼、武術、芸能、スポーツ、 そしてそれらが混じり合ってできたものの間を揺れ動き、現在に至っているのである。さ まざまな文化的な要素が複雑に絡み合って形成され発展してきた相撲は、特にそのはじま りを一時点に限定することが難しいと言えよう。
キーワード:相撲;江戸時代;日本の文化;力士の精神
相撲の起源については、「古事記」や「日 本書紀」に登場するほど古く、神話として扱われているものもある。一方、文献によれば、 相撲は古代の中国から伝われたそうである。そして、時の流れに従って相撲が発展し、変 化している。 初めの相撲は格闘色が濃かったのだが、 平安時代になって宗教文化色が増し、 神事として扱われるようになったそうである。鎌倉時代前後に武家社会となると武芸とし て、江戸時代には芸能としてというようにその役が変わってきた。江戸時代のころから、 職業・スポーツとしての現代相撲が形作られるようになった。このように相撲が日本の文化に合わせ成長・発展し、現在も日本の人々の文化生活に強く根付いている。
小論では、相撲の起源とその展開及び力士の精神などから日本人の心理や価値観を検討 してみ、さらに相撲と日本文化の関係を分析してみようと思う。
また、力士は独特の礼を守り、礼儀を重視し、根気強く自分なりの道を歩んでいる。実力を強めるために、絶えずつらい練習をしなければならない。力士の精神から日本文化と日本人の心理が見られると思う。それから、時代の発展に従って、西洋文化も相撲文化に入ってくるようになった。現代では、相撲の力士の中には中国、米国、チリ、ペルー、モンゴル出身の人も登場するようになったので、日本の相撲は国際化という新たな発展段階を迎えたといえるが、 これも日本文化の強い受容性のことを物語っていると思う。 しかし、土俵上に女性を上がらせてはいけないという男女差別の現状が存在しているのは日本文化の保守性がまだまだ強いことを反映しているだろう。