要旨:助数詞は数量を表す語の下に付ける語である。例えば、「一台」「五帖」の「台」「帖」の類。助数詞は物事の数量を具体的に表し、必要なものであるとしている。しかしながら、助数詞はなかなか厄介なものである。助数詞の使い方だけでなく、発音もややこしい。日本語学習者にとっては、助数詞の読み方を覚えるのがむずかしいと思われる。基数詞は後ろに助数詞をつけると、その読み方は元の読み方とはまったく同じとは限らず、音便が生じることもよくある。例えば、「本」を例にとって、「一本」の読み方は「いっぽん」であって、「二本」は「にほん」で、「三本」は「さんぼん」である。だから、どんな場合にどんな音便が生じるかは、難しくて、なかなか身に付けにくいと思う。
宮島達夫『助数詞の調査』は助数詞の使い方を詳しく紹介したが、助数詞の発音の部分には触れていない。計鋼(2001)は助数詞をとりあげ、音便が生じやすいのを分類し、総括した。しかし、なぜそんな分類したか、説明していない。また、日本語の辞典の付録などに助数詞一覧表がついているとは言え、取り上げられた助数詞が非常に少なく、日本語学習者にとって、それは助数詞の勉強には、不便だと思われる。そして、調べた限りでは、助数詞に関する研究は少ない。
先行研究の多くは使い方の面から助数詞を研究しているが、日本語学習者にとって、覚えにくい助数詞の読み方についてはあまり研究されていない。
そこで、本稿では、助数詞の読み方の資料を基にして、助数詞の読み方はどんな場合に濁音便が起こるか、どんな場合に清音便が起こるか、どんな場合に促音便が起こるか、助数詞の読み方の規則を考察する。
以下ではまず、具体的に助数詞の例を取り上げ、音便の生じやすい助数詞を探し出す。次に、音便の生じやすい助数詞の読み方を通して、助数詞の読み方の一般的な規則は何かを考察する。
本稿では、助数詞の読み方の規則について考察した。本稿で論じたことを以下のようにまとめておこう。
基数詞と助数詞を組み合わせる場合は音声学から見ると、三つの部分を分けている。1、基数詞プラス助数詞において、基数詞だけに音便が発生するもの。音便がよく発生する基数詞は「一」、「六」、「八」、「十」である。その中に、「一」と「八」のような「ち」を終わりとする基数詞は、「か」、「け」、「こ」、「さ」、「し」、「せ」、「ち」、「と」を冒頭とする助数詞と組み合わせると、促音便が発する。換言すれば、「一」と「八」は「k」、「s」、「t」を子音とする仮名と組み合わせると、促音になってしまう。「六」のような「く」を終わりとする基数詞は、「か」、「こ」を冒頭としての助数詞と組み合わせると、促音便が発する。換言すれば、「六」は「k」を子音としての仮名と組み合わせると、促音になってしまう。「十」と助数詞を組み合わせる場合には、「じゅう」、「じゅっ」、「じっ」と読んで、どちらでもいい。2、基数詞プラス「ハ」行の助数詞においては、助数詞「h」の同化により、「p」になる。「一」、「六」、「八」、「十」が促音になったと同時に助数詞が清音になった場合は「ハ」行の仮名を冒頭とする助数詞である。三の場合は、後ろの助数詞が濁音或いは清音になってしまう。三倍(さんばい)、三匹(さんびき)、三本(さんぼん)、三遍(さんべん)が濁音になってしまう原因は三の「n」が「ハ」行の仮名を同化して、濁音にさせるのである。しかし、三分(さんぷん)、三服(さんぷく)、三泊(さんぱく)、三歩(さんぽ)という清音になってしまうのは日本語の慣用型であろう。3、発音が不規則な助数詞である。「階」、「軒」、「足」と「一」、「六」、「八」、「十」を組み合わせる場合は前の研究と同じであるが、「三」の場合は特別である。その原因は日本語の連濁現象である。