はじめに
日本語の発展の歴史によって、日本のことわざは庶民の間から江戸時代に多くうまれたものと言われる(『ことわざ辞典』)が、人々の喜びや悲しいや憤りばかりではなく、自然と人間との関り合いや動物、植物の生態に至るまで、その内容はさまざまである。一口に生活の知恵というと余りに中身は多種多様で、しかもこれは書かれた知恵ではなく、口から口への伝承によるというところに特色がある。無学な人同士の間に直観的に了承されるいい方、使いやすさが身上である。だから、ここには推理や究明や判断などはなく、いきなり結論ばかりが累積していることになる。そのいずれもが、長い経験の積み重ねによって得られた知恵であって、決して単なる人生教育や処世訓のみにとまるものではない。
江戸時代の低い階層といわれた農民や職人などの間から生まれたことわざは、したがって今日の一般庶民の間にも十分に通用するもので、まだまだ生きている言葉といっていい。東洋でも西洋でも、各国は自分の文化と社会を反映することわざがある。しかし、社会の変化によって、人々の考え方も変化している。前人が創造したことわざに対して、理解も違う。これらの変化したことわざは国民が特定の社会の中で共有の世界観、人生観を反映する。