要 旨:いまや世界的な作家である村上春樹の作家性と個々の作品がジャズとどのように深く結んでいるかを、『風の歌を聴け』『ノルウェイの森』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』などの作品をもとにしてジャズと作品の関連をのべる。また、60年代におけるジャズはどのように村上春樹に影響をおよぼすか、更に、ジャズは村上春樹の作品とのかかわりは何かという二面を通じて、村上春樹をジャズで読み解いてみたい。音楽に関する趣味・嗜好・言語表現の特徴などを取り上げて、今まで気づかなかった読み方を楽しみ、ハルキワールドの魅力を深く味わっていく。
キーワード:村上春樹 ジャズ 60年代 青春 喪失感
村上式の奇妙で、遊離なダイアローグ、気晴らしのしょうがない時急に湧き上がる快感などの風格がジャズに似ていると考える。読者は華麗な迷宮に入るように、村上春樹の世界すなわちジャズの旋律を味わう。村上春樹は影響力のある文字でジャズの魂を数多くの人の情緒に入れた。彼の小説はジャズを徹底に解釈してしまう。つまり、反逆と堕落を宣伝するかわりに、強い力で人心を震撼し、一番奥の自分のよく知らない内心世界をうかがわせる。60年代の文化から深い影響を受けた村上春樹はジャズに心を打ち込み、ジャズ作風の小説を書いた。描写方法はリズムに富み、ジャズのように即興である。そして、小説の主題もジャズの表す情緒と同じ、自由とか、反逆とか、理想的な世界に対する憧れと考える。村上春樹の小説はジャズの解釈として、人心を引き入れ、読者の内心世界を省みさせる。総じていえば、ジャズのリズムは村上春樹の文章の韻律になり、ジャズの情緒は描写主題になり、ジャズが内心に対する思索は村上の創作目標であると思われる。