要 旨:自動販売機(以下、自販機と略す)は今、利便性の高い社会施設として認知されている。明治中期の「自動郵便切手ハガキ売下機」が日本の最古の自販機として現存していると言う。大正末に、「袋入り菓子自販機」が最初の普及型の自販機として、全国の菓子店の店頭などに数多く設置されたと言う。昭和中期、十円を入れると紙コップにジュースが出る「飲料自販機」が現れ、続いては「コーラ自販機」も登場した。
自販機が技術と、デザインの改良にしたがって、台数と販売品種が増え続けている。日本自販機工業会の資料によると、2007年末の日本自販機普及台数は約540万台、自販金額は約693千万円である。絶対数ではアメリカが世界一で783万台(2005年末)である。しかし、人口や国土面積を勘案した普及率では、日本は世界一である。
自販機の普及によって日本社会にも影響が及んでいると言われる。日本人の生活が自販機を持っている上、利便性や省力化などは高くなっている。しかし、自販機の普及でよい影響ばかりであろうか。そして、なぜ日本はこれほどまでに自販機が多いのか。
そこで、本稿では、近年、日本の自販機がこれほどまでに増加した理由を考察する。以下では、利用者側、自販機の設置者側と国側、三つの面から自販機の普及の原因を検討する。