要 旨: 日本人は独自の時間意識を持っている。この時間意識は日本社会の変遷とともに変化している。
本稿では、まず、日本暦法の発展史について研究する。日本の伝統的な暦法における二つの要素として、不定時法と太陰太陽暦が挙げられる。農業中心の日本社会においては欠かせないメデイアだったが、明治時代に入ると、明治政府の方針として近代化・工業化を推進する意図により、明治5年に強引に西洋の定時法と太陽暦が採用された。
次に、日本人の時間意識を時代別に研究する。江戸以前の日本は、農耕社会である。不定時法のもとで暮らしてきた日本人は、共同体を強く意識して生活をしていたため、必ずしもゆったりとした時間意識を持っていたわけではなかった。明治時代において、政府は鉄道や工場の建設、学校制度の充実により、時間厳守や時間の効率的利用が徐々に社会全体へ広がっていった。そして、その流れが一気に強まったのが、第二次世界大戦後であった。戦後復興期からそれに続く昭和30年代の高度経済成長期にかけて、産業が進み、時間厳守や時間の効率的利用が社会规範となった。だが、経済成長が進展し物資的豊かさがある程度果たされると、人々はやがて精神的豊かさを求めるようになり、時間は個人のものという意識が強まっていく。特に現在の若い世代は時間にルーズな傾向があり、他人と時間を合わせるという意識は薄い。
最後に、日中の時間意識の比較についても言及する。日本人は時計が指し示す時間に支配され、予定どおりであることを追求し、余計なストレスをためる。一方中国人は計画やスケジュールがたとえあったとしてもあまり気にせず、その時々に自ら状況判断し、ことを運ぼうとする傾向がある。
キーワード: 暦 時間意識 日本社会 変遷