要旨:人というものは社会の中で単独に存在する個体ではなく、他者との社会的相互作用のなかで発達する。贈答が人類の長い歴史の中で非常に重要な社会的行為であり、その存在する社会の文化や人びとの心理に深く関係している。特に日本社会においては、贈答は制度化された慣習として古くから存在し、日本の社会文化と密接な関係を持っており、独特性を形成した。その独特性は贈答対象、贈答品の選択、贈答習慣、赠答タブーや贈答動機などに現れる。日本の贈答文化を研究することが、日本の社会文化や社会的心理を考察するために重要な視点である。
贈答文化に対する先行研究がたくさんある。柳田国男は日本の贈答が神人の共食のために、食物を交換することと指摘した。この慣習はだんだん普及し、祭りを形に発展してきた。近世になって贈答の目的が人情に変わっていく。つまり、贈答は神様に対する畏敬意識を表わす行為から、社会、コミュニティそして家庭成員からの承認を得るための行為へと変わってきた。そこに人に同調する意識が含まれている。
本稿は先行研究を踏まえて、文献分析法と調査研究法を取り上げて、近年日本の贈答文化の変化を考察し、そこから日本の社会文化や日本人の社会的心理について検討したい。
キーワード: 贈答慣行;贈答文化; 義理;人情
目次
要旨
中文摘要
第1章 はじめに-1
第2章 先行研究-3
2.1 日本の贈答慣習についての研究-3
2.1.1 M・モースの『贈与論』について-3
2.1.2 柳田国男の贈答思想について-3
2.2 現代日本における贈答慣習の特徴-3
2.2.1 贈答相手-3
2.2.2 贈答品-5
2.2.3 贈答契機-5
2.2.4 贈答慣習に対する態度と心理の側面から見る-5
第3章 日本の贈答慣習の特徴が形成された原因-7
3.1贈答契機の多様性・秩序化が形成された原因-7
3.2贈答相手の多様性が形成された原因-7
第4章 現代日本における贈答慣習の社会的役割-11
4.1 義理の働き-11
4.2 バレンタイン・デーと歳暮の贈答文化に対する分析と対比-12
第5章 おわりに-15
参考文献-17
謝 辞-18