要旨
本論文では、中日児童観の違いを検討する。その違いは中日両国における児童教育のさまざまな問題を反映している。「狼が来た」(狼来了)は中国の子どもたちがよく知る民話であるが、「ごんきつね」は日本童話作家・新美南吉の代表作で日本ではよく知られるものである。この二つの作品の分析・対比を通して、中日児童観の違いを検討し、中国の児童教育の中にある不足や問題を明らかにするとともに、今後進むべき方向を提示する。
この文章は三部分からなる。第一部分では、二つの作品のあらすじと成立の背景を紹介する。第二部分では、児童観の視点から、この二つの作品を比較し、それぞれの特徴を分析する。第三部分では、中日児童観や教育観の相違点を検証する。そして最後に、次のような結論を出す。
以上の分析・考察により、中国の親たちは懲罰的結果のあるような話を好んでいることがわかった。これは中国教育の独善性をそのまま反映しているが、子どもになぜこれが悪いのか、いけない理由は何か、を教えていない。子どもの考えが軽く見られている。なにかミスが出るとき、子どもが怒鳴りつけられてしまう。これは子どもが自分の考えを言えないからである。あるいは、大人たちはその責任を取りたくないからである。詰め込み式の教育が、家庭にだけでなく、学校にも広く使われている。この上っ面だけで、深く理解しようとしない大人の態度は子どもの成長に悪い影響を与えているのである。
キーワード:児童観 教育観 中日比較
目次
中文摘要
要旨
1.はじめに-1
2.「狼が来た」と「ごんきつね」の紹介-2
2.1「ごんきつね」について-2
2.1.1作家と作品の背景-2
2.1.2 「ごんきつね」のあらすじ-3
2.2 「狼が来た」について-4
2.2.1作品の背景-4
2.1.2 「狼が来た」のあらすじ-5
3.「狼が来た」と「ごんきつね」から見た中日児童観の違い-6
3.1いたずらについて-6
3.2死亡の描写について-7
3.3プロットと目的について-9
4.中日児童観の比較-11
4.1中国と日本の児童観の生成および発展-11
4.2中日児童観の違い-13
5.おわりに-14
参考文献-16