要旨
大多数の中国人は「日本人の愛情観念は健康的ではない」と考えている。理由は、中国人の愛情観念が日本人よりやや保守的であるからかもしれない。逆に言えば日本人の愛情観念は「激しい」ということになる。その「激しさ」の代表は、おそらく渡辺淳一氏の『失楽園』であろう。あんなに愛し合ったのに、あんな悲しい死を選ぶなんて、なんて日本人は「激しい」のだろうと、中国人は思っている。
しかし、その原因を探っていくと、日本人特有の文化「義理と人情の板挟み」にたどり着く。しかし、これは「激しい」愛情観念を示すものではない。例えば川端康成の『雪国』にも同様の感情が現れる。この作品の中には「夢幻世界」「清潔」「純粋」といった非現実世界が数多く出てくる。これらは日本人の美意識である「わび」と「さび」にさかのぼることができる。
これらの「義理と人情の板挟み」と「わび」「さび」が日本人の愛情観念を形成する基盤なのである。これらの文化を理解して初めて、日本人の静かな愛情観念が感じられるのである。
キーワード:義理;人情;わび;さび;激しさ;静けさ
目次
要旨
中文摘要
1.はじめに1
2.日本の近現代文学について1
3.近代の作品から2
3.1森鴎外『舞姫』
3.2武者小路実篤『愛と死』
3.3川端康成『雪国』
4.現代の作品から5
4.1小池真理子『悪の愛情論』
4.2渡辺淳一『失楽園』
5.近現代文学における愛情の共通点と相違点6
6.日本人の愛情について6
7.現代人の愛情の変化7
8.おわりに7
参考文献9
謝辞10