要旨:曖昧表現という言語現象は世界各民族言語の中に普遍的に存在している。日本語はこの曖昧表現の代表とも言えるだろう。日本語は常に曖昧的、省略が多く、最後まではっきり言わない言語と言われている。これは正に日本語の特徴であり、社会的あるいは文化的な背景とも不可分である。
「どうも」という言葉は多義語として、よく日本人に使われている。「万能語」とも呼ばれる「どうも」は様々な場面に使われ、曖昧表現の代表と言える。従って、本稿では「どうも」の使う場面から、具体的な例を挙げて、それぞれの場面に隠された日本人のコミュニケーション心理を分析した結果、三つのコミュニケーション心理をまとめた。まずは集団意識を重視する心理で、次は他人との距離感を保つ心理で、最後は他人への思いやりで物事を考える心理である。
更には本稿では、地理面、文化面と社会面から、曖昧表現が生じる原因を分析した。従って、以下のような結論をまとめた。日本語の中で「どうも」のような曖昧表現は日本人の曖昧的なコミュニケーション心理を隠している。そしてこの曖昧表現が生じた原因は様々である。「どうも」のような曖昧表現をよく把握して、生じた原因を理解する事は日本人のコミュニケーション心理を把握することだけでなく、中日多文化交流に対しても、大きな役割を果たしている。われわれ日本語の学習者は、もっと自然な日本語を習得するために日本語の曖昧表現を理解すべきだと思う。
キーワード:曖昧表現、どうも、コミュ二ケイション心理、背景、多文化交流
目次
要旨
中文摘要
はじめに1
1.曖昧表現の定義及び現代日本語での使用1
1.1曖昧表現とは何か1
1.2「どうも」の意味 2
2.曖昧語としての「どうも」の使う場面2
2.1原因と理由が判然としない意味を表す場面2
2.2.感謝やお詫びの気持ちを強調する場面2
2.3挨拶言葉として使う場面3
3.「どうも」から見た日本人のコミュニケーション心理3
3.1集団意識を重視する心理3
3.2他人との距離感を保つ心理4
3.3他人への思いやりで物事を考える心理4
4.曖昧表現が生じた原因5
4.1地理的原因5
4.2文化的原因6
4.2.1禅宗文化6
4.2.2稲作文化7
4.3社会的原因7
終わりに8
注9
参考文献10
謝辞11