要旨:泉鏡花(1873-1939)本名、鏡太郎。金沢市下新町生れ。尾崎紅葉に師事した。彼は日本のロマンチシズムの代表的な作家である。明治、大正と昭和三つの時代に活躍した。江戸文芸の影響を深くうけた怪奇趣味と特有のロマンチシズムで知られる。また近代における幻想文学の先駆者としても評価される。
本稿は、泉鏡花の代表作―『高野聖』を中心にして、彼の生涯からそのロマンチシズムの発生の原因を分析し、そして全小説に貫いていたロマンチシズムの表現と創作背景を通して、作者のロマンチシズムの変化をうかがい知ることができると考える。一方では、それを泉鏡花のもう一つの作品、『眉かくしの霊』に見られるロマンチシズムと比較して、泉鏡花のロマンチシズムはどんな本質的な変遷があったかを解明してみた。また、文学大将森鴎外のロマンチシズムとの比較を通じて泉のロマンチシズム特徴をまとめてみた。更に、日本のロマンチシズム文学に対して全面的に理解することができると思う。
本稿は以上の研究により、次のような観点を明確にした:一、親友が次々と亡くなってしまうという経験は、泉鏡花の独特なロマンチシズムの発生する現実的な原因である。二、ロマンチシズムは曲折な変化過程を経験した。泉鏡花は伝統芸術から養分を摂取し、独特な風格を持つロマンチシズムを作り出した。三、『高野聖』では、泉のロマンチシズムは自由奔放な想像を通じて表現されている。現実から離れ、幻の世界を作り出した。独特の幻想世界は彼のロマンチック文学の大きな特徴とも言える。四、作品は山中と水中の怪談だというものの、社会の底辺の女性への同情も表している。
キーワード:泉鏡花、ロマンチシズム、幻想世界、女性観、発展と変化
目次
要旨
中文摘要
はじめに-1
1.ロマンチシズムについての先行研究-2
1.1日本人のロマンチシズムについて-3
1.2泉鏡花のロマンチシズムについて-3
2.『高野聖』の紹介-6
2.1あらすじ-6
2.2作品の創作背景-7
2.3小説の主旨-8
3.『高野聖』におけるロマンチシズムの分析-8
3.1幻想世界によって表現されるロマンチシズム-8
3.2ロマンチシズム文学の構築-10
3.2.1作品の叙述方法-10
3.2.2水月の幻想的空間の構築-11
3.2.3言葉の特徴-12
3.3ロマンチシズムに現れる女性観-13
4.『高野聖』から『眉かくしの霊』までロマンチシズムの発展と変化-14
5.森鴎外と泉鏡花のロマンチシズムの比較-14
5.1『舞姫』から見て森鴎外のロマンチシズム-14
5.2 比較研究から得たヒント-15
おわりに-16
参考文献:-17
謝 辞-18